24キロ歩かせ足に後遺症 会社に1600万円の賠償命令 広島地裁福山支部

2018.04.24 【Web限定ニュース】

 新人研修で24キロメートルを歩かされたことにより足に障害が残ったとして、元労働者の男性が㈱サニックス(福岡市博多区、宗政寛代表取締役社長)を訴えた裁判で、広島地方裁判所福山支部は同社の安全配慮義務違反を認め、1592万1515円の損害賠償を命じた。

 男性は研修後、右足に関節の機能障害と左下肢に神経障害が残り、福山労働基準監督署長により後遺障害に認定された。同地裁は研修と後遺障害の因果関係を認め、「(研修自体)無理があるプログラム」、「会社にとって望ましい社員を選別するための手段として研修を用いる意向があるかもしれないが、仮にそうであればその際に負傷した参加者に対しては責任を負わなければならない」と厳しく判示した。

 同社は太陽光発電設備の製造・販売・施工などを営んでいる。男性は平成25年8月16日に48歳で入社した。入社時の体重は約100キロの肥満体型だった。同社は同年8月18~30日までの間、28人の新入社員を対象に新人研修を実施した。新入社員は研修期間中、同社の研修センター内にある宿泊施設に泊まらなければならず、研修初日には盗難防止の名目で財布と携帯を回収された。夜間の外出は禁止で、研修期間中の公休日は8月24日の1日のみだった。

 研修では朝6時30分に集合し、営業の座学や試験などを受け、講義がある日は夜7時に解散、解散後は各自自室で課題や試験の準備などをしなければならなかった。加えて8月21日、23日、25日の3日間は、10人ほどが1班になって歩く「歩行訓練」が実施され、27日には「サニックススピリッツ」という名称の、24キロメートルを5時間で完歩する訓練が行われた。サニックスピリッツは「あきらめない、最後までやり通す社員の養成をめざすべき」という前社長の信念を反映したもので、新人研修の中でもとくに重視されていた。男性は完歩しないと正社員になれないと講師から言われていた。

 男性は歩行訓練初日の8月21日に足をくじき、訓練の中断と病院に行くことを求めたが、研修の講師は「とりあえずがんばってみてください」と認めなかった。男性は足に負傷を抱えたまま歩行訓練を続け、8月27日に「サニックススピリッツ」に参加、4時間51分で完歩したが、負傷が悪化、足に障害が残った。

 同社は「(サニックススピリッツは)徒歩の平均速度のプログラムで、医療従事者はいないが何らかの事故や病気があればすぐに対応できるようになっていた」と安全配慮義務違反はないと主張した。

 しかし、同地裁は①研修期間中は外出禁止にし、自分で医療機関を受診する機会を奪っている、②サニックススピリッツは参加者全員が完歩することを目的としており、参加者の年齢が幅広く、体力にも大きな差があるにもかかわらず、個人差や運動経験の有無に全く配慮していない点で無理があるプログラム、③男性が転倒して右足を痛め、病院に行きたいとも申し出たのにもかかわらず、サニックススピリッツに参加させた――などの理由で、同社の安全配慮義務違反を認めている。

【平成30年2月22日判決】

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