団体交渉に臨む心構え/弁護士 荒瀨 尊宏

2016.02.15 【弁護士による労務エッセー】
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2 団体交渉の拒否に伴う法律上、事実上の不利益

 労働組合の存在、そして労働組合が団体交渉をする権利は憲法上認められた権利であり(憲法28条)、使用者が正当な理由なく団体交渉を拒否することは不当労働行為にあたります(労働組合法7条2号)。団体交渉のほかに、労働組合員であること等を理由とする不利益取扱いや使用者が労働組合の活動に干渉したりすること(いわゆる支配介入)も不当労働行為にあたります。

 これらの不当労働行為に対しては、労働委員会における審理を経た上で行政上の処分(いわゆる救済命令)が予定されています。また、民事上の損害賠償請求の対象にもなり得ます。つまり、法律上、使用者は団体交渉に応じることを制裁をもって義務づけられているのです。

 しかし、法律上の制裁と同じかそれ以上に使用者側を悩ませるのは、労働組合による組合活動です。団体交渉を拒否された労働組合は、団体交渉に応じない使用者側の態度を批判する街宣活動やビラ配りを行うことがあります。そんなことが許されるのかと思われる方もいるかもしれませんが、このような組合活動は憲法上の権利である団体行動権に基づくもので、正当なものであると認められる限りこれを止めさることは難しいですし、レピュテーションリスクも計り知れません。

 そして、労働組合が街宣活動やビラ貼りなどの組合活動に及んだ場合、使用者側はますます感情的になり、労働組合を撃退してくれる弁護士を頼もしいと考えがちですし、受任した弁護士も使用者側の期待に応えようと極端な態度に出ることが多々あります。

 しかし、これでは円滑な団体交渉は実現できませんし、かえって使用者側は上述した様々なリスクを抱え込んでしまうことになり、悪循環に陥るだけで何の解決にもなりません。

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