【見逃していませんか?この本】入社6年目の若手からみた「労組活動」とは?/塩田武士『ともにがんばりましょう』

2017.05.01 【書評】
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 塩田武士といえば、昨年刊行され話題を呼んだ、”グリコ・森永事件”をモチーフにした『罪の声』の著者というイメージが強いだろうか。第7回山田風太郎賞受賞、『週刊文春ミステリーベスト10』第1位、第38回吉川英治文学新人賞ノミネート――と、文壇で話題を読んだ一冊だ。

 その著者が、『罪の声』の4年前に刊行していたのが『ともにがんばりましょう』だ。この3月、文庫本が発売となっている。

 舞台は上方新聞社。入社6年目の主人公・武井涼は記者職に従事しているが、ある日突然労働組合の執行委員長から口説かれて(騙されて?・笑)「教宣部長」を務めることとなる。

 やがて、会社側が読者減少などを理由に提案してきた深夜労働手当引下げ案が波紋を呼び、交渉は熱を帯びて行く。交渉が進む過程はリアリティ抜群で、遠い存在に感じてしまいがちな労働組合を身近に感じられるだろう。

 武井の弱々しいキャラクターが憎めず、味わい深い。一方で、執行委員、経営側とそれぞれに一癖も二癖もあるメンツが揃い好対照だ。

 「労組」「交渉」などがテーマというと、固いイメージを想像してしまうかもしれないが、本書に限ってその心配は無用。むしろ、元漫才師のキャリアを存分に活かし、笑いどころが多い。「腹を下した人間は見たことあるが、頭を下した人を見たのは初めて」などの表現は、そうそう思いつくものではない。

 おりしも今日はメーデーだ。本書を買い、連休に読み進めてはどうだろうか。

 しおた たけし、講談社・799円/作家。1979年、兵庫県生まれ。関西学院大学卒業後、神戸新聞社に勤め、2012年から作家活動に専念。『盤上のアルファ』『崩壊』『罪の声』など。

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